【TEPPEN】デッキ構築論

初めに

 こんにちは、ViruSです。唐突な質問ですが、皆さんはカードゲームをどのように楽しんでいますか?競技として勝敗に一喜一憂しながら楽しむ人もいれば、自己表現の場として考察に勤しむ人もいるでしょう。楽しみ方は十人十色ですよね。

Twitterの印象やプレイスタイルから誤解されることがしばしばあるのですが僕は後者側で、試合における勝敗や最高到達ポイントよりも、その環境の理解度やプレイング深度に関する考察の方を好む研究者気質のプレイヤーです。そんな僕がカードゲームをプレイする上で、最も楽しく感じる瞬間が紛れもないデッキ構築の時間です。可能性を模索する中で、環境と向き合いながら試行錯誤する時間は、まさに至福のひとときと言っても過言ではありません。

実際に同じような嗜好を持ったプレイヤーは多いのではないでしょうか?一方で、「自分にはデッキ構築の才能がないから...」と諦めてコピーデッキを多用する方も結構見かけます。僕はそれを「もったいないなぁ」と横目に見ることが多いんですけど、その手の人たちって、実は才能がないのではなく定石を知らないだけなんだと思います。TEPPEN界隈でビルダーと持て囃されている人たちも、別に大したことはないんです。

「知識の差」

これに尽きると思います。実際、誰でもデッキは作れます。しかしSNSの発達によって情報伝達が早くなり、メタゲームが加速しました。このことが原因で多くのカードゲーマーは(特にDCGでは)主体的にデッキを作らなくなってしまいました。

それは何故か?

答えは単純で、その方が楽でコスパが良いように思えるからです。僕は別にそれが悪いことだとは思いません。ストリーマーが組んだデッキをコピーするのも良いでしょうし、ランカーのデッキを参考にして自分なりに調整するのも良いでしょう。ただ個人的にはそこに「つまらなさ」を感じますし、コピーデッキに頼るばかりでは脳みその箪笥の引き出しが増えることはないと考えています。参考にして活用するのと、他人の努力に縋るのとでは天と地ほどの差がありますからね。

だからこの記事を読んだ人がデッキ作りのノウハウと奥深さを再認識し、自己流のデッキを組んでくれることを願います。そして何より、純粋にデッキ構築を楽しんで欲しいです。

 

1. アーキタイプ

 まずはアーキタイプの例を説明とともに見ていきましょう。

 

アグロ

→ 最序盤からユニットを展開し、アクションやアーツにより強化&防御することで早期に決着をつけることを目的としたデッキを指す。攻撃こそ最大の防御を体現し、妨害手段は少なく押し切ることを得意とする。

具体例: 逆鱗レウス

 

ミッドレンジ

→ 中盤に真価を発揮するデッキタイプを指す。アグロよりも採用されるカードの質が高く、攻守ともに優れている。ゲームエンドまでの速度はアグロに劣り、コントロールに勝る。バランスの良いデッキタイプ。

具体例: 抗体ジル

 

コントロール

→ 攻めることよりも妨害&除去することに長けており、相手が息切れしたり、終盤になったタイミングで一気に攻撃を仕掛けゲームエンドまで持っていく。考察に時間を要するので環境後半で台頭しやすい。

具体例: 落鳳破ゼロ

 

コンボ

→ 複数枚のカードの組み合わせにより、一撃必殺級の展開を作り出し勝利することを目的としたデッキのことを指す。そのコンボを決めることに注力する為、特定のパーツを集める為のカードが多く採用され、デッキ密度が高い。

具体例: チャージショットX

 

テンポ

→ 盤面を含めたMP優位性を保つデッキ。例えば、4コストで出されたペンギーゴを即出し5コスバレッタによって処理した場合、2/6のユニットが盤面に残り1MP負けているという状況になる。この様にコスパ良く盤面に干渉することができ、除去と展開をバランス良く行いつつ、盤面的MPアドを稼ぎながら詰めるデッキタイプのことを指す。

具体例: 成長波動リュウ

 

大体のデッキはこの5パターンに分類できるかと思います。細かく分ければ電刃等のバーンデッキがありますが、これはコントロール又はコンボに内包されると考えています。また、他DCGとは時間的な概念により一線を画すTEPPENにおいてはランプやビッグマナなんてのはありません。もちろんそれっぽくは言えますが、どうしても明確にコレ!ってのは言いづらく、〇〇寄りの✖️✖️とかそういう言い方をする場合がほとんどだと思います。それは何故かというと、ターン制のDCGではそのデッキがどのMP帯を主戦場としているかで分類されることが多いのですが、TEPPENにはターンという概念がないのでその様に分類出来ません。また、使用者のプレイングにより物議を醸すデッキもあるのでこのデッキはこのタイプ!ってのが言いづらいんです。

 

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お市が実装された時に猛威を振るっていた【嘆キ、喚イテ、朽チ果テヨ!】を例として説明します。このデッキは世間一般的に、黒単コントロールと分類されていましたが、僕自身はミッドレンジだと認識してプレイしていました。除去が多く採用されているので、外見的には確かにコントロール的配分ではあるのですが、実際はアーツのデメリットを補う為に除去がこの枚数が投入されていました。

 

確かに、【呪いの抽出】というカードが活きるタイミングが後半なのは間違い無いので、抽出ありきの嘆キとして捉えプレイしている人にとってはコントロールデッキだったのかもしれません。しかし、実際にはアーツでの展開で削りきれなかった残りライフを抽出で詰め切るというサブプランとして用いられることがほとんどでしたし、ミラー以外では1〜2回目のアーツ発動でゲームエンドまで持っていけました。レスポンスを抜いた平均的な試合時間は2〜3分程度だったことから僕は当時の嘆キはミッドレンジだと認識していました。

 

TEPPENではアクティブレスポンスの回数によって使用MP数も変わってくるので、僕は「どの時間帯でゲームを決めることを目的としているのか」「どの時間帯を主戦場としているのか」アーキタイプの分類基準になると考えています。具体的には平均試合時間が1〜2分だとアグロ、3〜4分だとミッドレンジ、4分〜タイムアップまでがコントロール、といった風に分類されるでしょう。

 

現在の混色アグロは【無の境地】も【ドールズの記憶】も、皆さんが大好きで大嫌いな【青電主の奮い】もありませんから、初速さえ捉えれば後半にかけてなだらかに失速していきます。ミッドレンジの代表格である抗体ジルでは序盤から中盤にかけアクションを重ね、敵の防御力を削いでから一気に切り札とリュウor真田で押し込むことをゴールとしています。全体的な試合速度が早くなった事からコントロールは数を減らしましたが、最近だと耐久型のミラージュデコイが流行ってますよね。時間が経過すればするほど防御力が増すので、後半でジリ貧になるということが起きにくいです。

 

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[Ranaもこもこ式瞬獄殺]

 

活用方法の例として過去のTier1デッキである黒単瞬獄殺を紹介します。このデッキの勝ち筋は【超文明の反逆者 Σ】と【アジュレ】によるΣアジュレループでした。デッキを掘り切ることで高バリューの無限リソースを確保する事が可能で、まさに無敵の時間帯を作ることが出来ました。ここで重要になってくるのはループ到達時間を早め、そこに至るまでの耐久手段を確保することです。リストを見れば除去に加えて、デッキ圧縮手段として軽いアクションが複数枚採用されていることが分かりますね。

この様に強い時間帯を設定して、そのコンセプトに沿ったカードを詰め込むということがデッキ構築では重要になってきます。所謂、勝ち筋から逆算したプランニングというやつです。アーキタイプを理解し、枠組みを設定してあげることがデッキ構築のファーストステップと言えるでしょう。

 

2. コンセプト

 前項の続きとしてコンセプト設計について深く掘り下げていきます。

〇〇を使って勝利したい、△△に有利を取りたい、□□を軸にしたい等なんでもいいです。要は、そのデッキを使ってやりたいことを明確にするということがコンセプトを設計するということです。使いたいカードや強そうなカードを特に理由もなく詰め込んでしまうと、結局のところ何がやりたいのかよくわからない、まとまりのない30枚が生まれます。こんなものはデッキとは言えませんよね。

 

まずは抽象的な目標を設定し、それに沿ったカードを詰め込み、トライアルエラーを繰り返すことでデッキの純度を上げるというのがデッキ構築の一連の作業です。

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犠牲軸棘飛ばしを例に簡単に工程を解説していきます。

(ちなみにデッキとしては弱いです)

コンセプト: 新要素を多く用いた攻撃的なデッキ

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ティーポ】と【イレギオン】を軸として攻める

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即効展開と噛み合い的にプレイ時3点犠牲ユニットを多く採用

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エストとレスポンスの親和性から3点犠牲アクションを採用

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攻撃速度を保つために除去は最小限に抑える

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フィニッシャーとしてベガ&ライゼクスを採用し息切れ対策

          

 

この様に、抽象的なコンセプトを設計し、具体化を繰り返していくことでそのデッキの輪郭が現れ、そのデッキを通してやりたいことが明確化されていきます。強いか弱いかは別として、この工程を経たデッキはリストからやりたいことが伝わるようになるので、他者からの助言も得やすくなり、自身で改良する際も改善点が見えるようになっていきます。

 

3. シナジー

この項を解説する前に、まずはシナジーを定義させていただきます。シナジーとは広義的に相乗効果のことを指します。複数枚のカードを重ねて使用することによって強力な効果を発動する組み合わせのことをコンボと呼び、シナジーとはそれを生み出す要因のことを指すとされています。

僕自身は・・・

 

コンボ = 大規模爆発💣

シナジー = 小規模爆発💥

 

と、捉えています。マクロ視点で見る爆発(コンボ)も、ミクロ視点で見ると実は小規模爆発(シナジー)が連鎖的に反応して構成されていることが多いです。つまり、コンボとはシナジーによって引き起こされる現象と定義できるかもしれません。ただ、シナジーを必要としないコンボもありますし、線引きが難しいところではあります。

 

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具体例を挙げると、【いぶき】に【フックショット】を付与し一方的に殴るという下地に【予期せぬ妨害】や使用アーツである【テンプテーション】やそのほかの停止アクションを組み合わせ補強するのがコンボです。決まればそのままゲームエンドなのですが、まず手札にこれらのカードを引いておく必要があったり、APを貯めておかなければいけなかったり、【抹殺】の様な回答札を相手が持っていなかったりと、要求値が高いのが特徴です。コンボパーツのそれぞれは単体として見れば弱いことが多く、組み合わせによりその強さを何倍にも跳ね上げるのが特徴の一つと言えるでしょう。また【テンプテーション】の様なコンボデッキでさえ〝呼応〟する為に1コストアクションが採用されていたりと、目立たないシナジーも内包されています。

 

シナジーはコンボよりもパワーは低いものの、互換性があり自由度が高いです。

例えばコンボの手順が 

ABC 

の様な決まった手順であるのに対し、シナジーの手順は

ABC

BCD

DA → C

の様に自由度が高く、互換性があります。これがコンボとの決定的な違いです。

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具体例としては【レディ】と【シェバ】の様な種族シナジーであったり...

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大谷吉継】等の鈍足ユニットと【刹那】の鈍足シナジーが該当します。

 

これらの組み合わせはゲームエンドまでは持っていけないものの、難なく組み合わせることが可能で互換性もありますよね。相互に作用し欠点を補い、その効果を高めています。この様に親和性が高く相互作用するギミックのことを総称してシナジーと呼びます。

 

そして、シナジーを多く組み込むことが強デッキの共通項と言えます。

シナジーを組むことのメリットは・・・

 

1. 各カードを単体で使用するよりもパワーが高くなる

2. 互換性がある為、一定の動きを安定して供給出来る

3. デッキに統一感が生まれ、やりたいことが明確化される

4. 細かな分岐点が生まれ、プラン変更しやすい

 

他にもたくさんあると思いますが、パッと浮かんだのはこの3点です。

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例えば、ただの緑単ではなく【クエスト】を持ったユニットを多く採用し、シナジーを組むことで【シャクナ】等のユニットを上手く活用することができます。単体で見ればこのカードは及第点よりも少し低いスタッツを持つカードなのですが、クエスシナジーによって他のユニットを強化したり、それによって自身の強みを活かせたりと強力な相互作用を生みます。

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ペコロス】の効果対象が【ババデル】や【アーマーポチ】といった複数枚に該当していたり、それらのクエスト効果を誘発するユニットが【ペコロス】に限定されておらず、アーツや【綾里千尋】で補うことが可能です。この様に、互換性が生まれやすい点もシナジーを組み込むメリットと言えます。

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そして何より【英雄の激突】や【スサノオ】などの制約のある強カード類を使用できる特権が得られます。シナジーを組み、デッキに統一感を持たせることによって、綺麗なシナリオが出来上がるわけです。クエスト大楯でいうと・・・

 

1. クエスト持ちユニットを展開し、効果発動を促す

2. 場持ちの良いユニットで盤面を制圧し、有利状況を作る

3. 【英雄の激突】や【トリニティ】で布陣を完成させ押し込む

            or

3'. 【スサノオ】で押し込んでフィニッシュ(方舟でリサイクル)

 

この一連の流れはマクロ的に見てコンボと言えるでしょう。しかし、ミクロ的に観察するとそのコンボを円滑に進める為に幾つものシナジーが組み込まれていることが分かりますよね。この様に小さくて強い動きを連鎖させて、決定打を作り上げることがデッキ構築の要です。